「不動前」は大人が住んで心地良い!ほのぼの和む庶民派な街を巡る

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東急目黒線の「不動前」駅をご存じでしょうか? 数年前に某有名トークバラエティ番組で「不動前芸人」が取り上げられたことから、聞き覚えがある人もいるのでは。不動前エリアは、五反田、目黒、武蔵小山といったメジャーどころに囲まれているものの、あまりなじみがない人にとっては、どんな街なのかイメージがわかないかもしれません。

そんなマイナーとされる街にこそ、光る何かがあるかも? そこで今回は不動前の魅力を知るべく、地域メディア「武蔵小山新聞」編集長の金川勝己さんに街を案内してもらうことにしました。不動前に20年ほど暮らした経験を持つ金川さんと一緒に、早速街歩きスタートです!

●参道には老舗の名店も! 不動前きってのランドマークスポット「目黒不動尊」

スタートは、東急電鉄目黒線の不動前駅から。ちなみに、不動前駅は目黒線を始め、JR山手線や都営三田線、東京メトロ南北線が乗り入れる目黒駅から一駅とあって、交通の便にも優れた駅。ちなみに、人気タウンとして有名な武蔵小杉や武蔵小山も目黒線沿線です。

「不動前駅周辺は中学校や高等学校、企業のオフィスも多いです。平日朝や夕方は学生や通勤中のビジネスパーソンで賑わっています」(金川さん)

■東急電鉄目黒線不動前駅から主要駅への所要時間
渋谷駅......7分(目黒駅で東急目黒線に乗り換え、以下同)
品川駅......8分
新宿駅......13分
新橋駅......15分
東京駅......21分
(※乗車時間だけの記載です。乗り換え時間は含みません。ジョルダン乗換案内を参照)

「不動前」という駅名は、駅から徒歩15分ほどにある「目黒不動尊」に由来しています。関東三十六不動霊場にも数えられる有名な寺院で、お正月や縁日(毎月28日)では大勢の参拝客が足を運ぶそう。ということで、目黒不動尊を訪ねてみました。

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目黒不動尊は、関東最古の不動霊場で日本三大不動の一つとして知られています。平安時代に、天台宗の僧侶・円仁が、比叡山にいる師匠の最澄のもとへ向かう途中、夢で不動明王のお告げがあったことから、自ら不動尊像を彫刻して安置したことにはじまるそう。江戸時代には、江戸近郊では有数の参詣行楽地として庶民に親しまれたようです。

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「本堂裏の墓地には、"サツマイモ先生"と呼ばれ、江戸時代に人々を飢饉から救った学者・青木昆陽の墓があります。境内には、サツマイモを育てているエリアも。毎年10月28日には、供養を兼ねて甘藷(かんしょ)祭りが開催され、サツマイモや大学イモを売る露店も集まるとか。歴史に名を残す偉人を身近に感じるスポットでもあります」(金川さん)

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また、江戸時代の門前では、粟餅や飴、目黒の名産だった筍を使った筍飯が売られ、有名だったとか。 現在も参道に続く商店街には、古くから営む個人商店が軒を連ねています。なかでも、味の名所として知られるのが、老舗うなぎ店「にしむら」。

店頭では、国産の最高級うなぎが紀州備長炭で焼かれているため、香ばしい匂いがあたりに漂います。平日、休日問わず、昼時はいつも混み合う人気ぶり。

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ちなみに、うなぎのおいしさを最大限活かすべく、不動尊の井戸水で新鮮さをキープしているとのこと。80年あまりにわたり代々継ぎ足されてきた門外不出のタレが、うなぎの味を引き立てます。これぞ老舗だからこそ叶えられるおいしさです。

また、参道の珍スポットとして金川さんが紹介してくれたのが「寿司長」。

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看板からして回らないお寿司屋さんかと思いきや、実は自転車販売・修理の店というトリッキーさから、金川さんも気になってよく訪れていたそう。残念ながら閉店の張り紙が......。

「入り口にタイヤの空気入れ無料って書いていたのに、実際は50円。おやじさんいわく『無料なのは学生限定』って、おいっ!て感じですよね」と懐かしむ金川さん。閉店してしまったものの、こうしたエピソードからも東京らしからぬローカルっぽさを感じ取れます。

●美味なランチスポットも目白押し!食後はゆったりくつろげるカフェでのんびり

不動尊を巡ってお腹が空いてきたところで、金川さんが行きつけだという中華料理「悟空(ごくう)」へ。実はこのお店、元は不動前駅のお隣の武蔵小山駅にあったのですが、武蔵小山駅周辺の再開発に伴い、引越してきたとのこと。

750円からのランチは全部で10種類。ボリュームがあるので、家族やカップルだとシェアしながら楽しめそう。

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「中国の田舎で食べられているような家庭料理がおいしいお店です。ランチ定食以外にも『シャキシャキじゃがいも炒め』や『さといもの葱油いため』など、庶民的だけど食べ飽きしない味が楽しめますよ」(金川さん)

悟空以外にも、不動前駅周辺にはミシュランガイドのビブグルマンにも掲載された「ピッツェリア ベントエマーレ」や、こだわりの高級肉をリーズナブルに食せる「焼肉しみず」など、グルメガイド本でも度々紹介され、かつリーズナブルなお値段で楽しめる名店がひしめいています

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食後にコーヒーを......と思ったら立ち寄りたいのが、「158&Co space(ワンフィフティエイト&コースペース)」。駅から徒歩5分ほどにある、ガラス張りの外観が目印のカフェ兼ショップです。オリジナル焙煎のコーヒーは、深くて濃い大人味。

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「"コーヒーを飲む場所"としてだけではなくて、地域コミュニティのハブでありたいと思っています」と語るのは、自然体な笑顔が素敵なバリスタの吉村哲郎さん。そう言われてみると、確かにお店のつくりもTHE・コーヒーショップというよりは、おしゃれなリビングといった雰囲気。

客層は1歳から72歳くらいと幅広め。吉村さんとの会話を楽しみに訪れている人も少なくないそう。

「以前、レストラン事業を展開する大手の会社に勤めていましたが、いまは仕事にも豊かさを感じることができます。それもこれも不動前に暮らす皆さんが温かいから。僕に差し入れを持ってきてくださる方も多くて、それもカレーやおまんじゅうまでいろいろ。人間同士のつながりのありがたさを実感できる街だと思います」(吉村さん)

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●森林と四季を感じる暮らしは不動前で手に入れる

お腹も心も満たされたところで、散歩をリスタート! 訪れたのは、不動前から武蔵小山にかけて広がる「林試の森公園(りんしのもりこうえん)」です。

林試とは林業試験の略で、明治33年に「目黒試験苗圃(びょうほ)」として、国内外の樹木がどのように育つのかなど、森林にまつわる研究がスタート。その後「林業試験場」に名称を変更し、現在は公園として一般にも開放されています。

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公園内にはブナやクヌギ、ケヤキといった広葉樹をはじめ、400種類以上の草木が生い茂っています。野鳥も多く飛来することから、住宅地にあるとは思えない公園以上森林未満のスポットです。

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「12万平方メートルの広さがあり、外周を歩くと45分かかるとあってとにかく広いです。都内だとここまでの自然を肌で感じられる場所は、少ないのではないでしょうか。僕はよく朝にウォーキングをしていましたが、最高に気持ちがいいですね。あと、大人だけの利用はできませんが、公園内には5月から10月まで利用できるデイキャンプ場もあります。教育の一環として小学生や中学生を主にした団体さんやファミリーには人気ですよ 」(金川さん)

林試の森公園ほど大規模ではないものの、自然を感じられる場所が点在しているのも不動前の特徴の一つ。

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たとえば、武蔵小山駅と不動前駅間にある全長約400メートルの「不動前緑道公園」は、目黒線の地下化にともない、その上部を利用して2009年に造られたスポット。地域のボランティアが花壇を手入れしており、四季の草花を楽しむことができます。

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また、緑道にはのびのびとくつろぐネコさんが3匹。このエリアは、「地域ネコモデル地区」として、野良猫たちの面倒もボランティアが 見ているとのこと。人が近づいても逃げないネコさんたち。安心しきっている様子に、何ともほっこりさせられます。

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2017年4月に撮影した目黒川の様子

そして、春は何といっても桜の季節。目黒川の桜といえば「中目黒」が有名ですが、不動前なら人込みもなくゆっくりと鑑賞できるので、穴場かも? こうした四季の楽しみを生活圏内で感じられるのは贅沢です!

●激安なだけじゃない!個人商店の魅力を堪能できる一大ショッピングセンター「TOC」

生活利便性を語るうえで欠かせないお買い物スポット。百貨店や大型ショッピングモールは街の人気を支える要素のひとつです。不動前圏内にあるのは、そうした商業施設とは一線を画す、いぶし銀な「東京卸売センター」、略してTOC。

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地下3階・地上13階のビルには、食品からファッション、家具までありとあらゆるテナントが入居しており、生活必需品はすべてそろうと言ってもいいくらいです。特筆すべきはその安さ。ほとんどの店舗が卸売価格で販売しています。

スポーツシューズやTシャツがダンボールに山積みにされたお店から、毛皮のお店、高級な陶器のお店まで、高品質なものが格安かつ雑多に売られている様子は、いわゆる一般的なショッピングモールとは違い、異国のバザールといった雰囲気。

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なかでも、おしゃれなインテリアショールームが集う9階フロアは、金川さんも行きつけとのこと。割安で手に入るとのことで、個人から業者まで、さまざまな人が購入しにくるそうです。

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館内を散策していると、オーナーのこだわりと唯一無二な雰囲気を醸し出す店舗もちらほら見受けられます。たとえば、異彩を放つ店構えが印象的な「メヒコ屋」。メキシコの雑貨に特化しており、国内の有名テーマパークにも商品を卸しているとか。

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25年前に、メキシコやペルーといった中南米を巡り、その魅力にハマったというメヒコ屋のオーナー。旅行会社に勤務したのち、中南米から民芸雑貨を直輸入する会社を立ち上げたとのこと。こだわりがにじみ出るショップに出会えるのもTOCの魅力です。

●おひとりさまでも大満喫できる不動前の夜

日が暮れてきたら楽しみなのが、夜ご飯。グルメスポットに事欠かない不動前ですが、休日だけではなく仕事帰りにも立ち寄りたいお店がたくさん。今回は、金川さんいち押し、駅から徒歩4分の「ワイン酒場 ツキアカリ」にお邪魔しました。

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カウンターとテーブル席あわせて13席のこじんまりしたお店では、柔らかい笑顔が印象的な店長の山野史郎さんが腕をふるう手作りフレンチを頂けます。お惣菜やお肉料理の種類も豊富。季節を感じるメニューをリーズナブルに堪能できます。

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店長の人柄とおいしい料理に惹き寄せられるのか、リピーターが絶えないそうで、なかには週5日通う強者もいるとか。今年はお客さんたちと国内ワイナリーを巡るバスツアーも開催したとのこと。

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おひとりさまにもうれしいメニューが、「特盛り!おまかせ惣菜プレート(5~6種類)」。その日ごとに、一品ずつにこだわって作った野菜やお肉などの総菜がてんこ盛りで1,500円と、何とも良心的なお値段設定。これだけでお腹いっぱいになりそうです。

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また、帰宅前に一杯さくっと飲みたい気分のときは、ぜひベアードビール専門酒店「Dspeed」へ。今年6月にオープンしたばかりの酒店で、立ち飲みもできるお店です。

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静岡県の地ビール「ベアードビール」を生樽で8種類、定番&季節限定あわせたボトルビールを30種類以上味わうことができます。

フードメニューの鉄板「広島風お好み焼き」は、オタフクソースで研修したというオーナーの松原英一さんの手作り。本場の味を堪能できるとあって、ビールは買わずにお好み焼きだけテイクアウトする人もいるそう。

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ちなみに、お店で接客もする松原さんの本業は自動車部品の販売。沼津の工場に通う中でベアードビールに出会い、お店の開業に至ったといいます。「大変ですが、それぞれの仕事が楽しいので毎日充実しています」と笑う松原さん。人生を満喫する大人がいる街は、それだけで素敵です。

●不動前は「マニュアル化していない人情が残る街です」

不動前の街歩きをして気がついたのは、華々しさはないけれど、自然や生活利便性、グルメなど調和がとれているということ。また、今回紹介した以外にも、おでんバーや本格フレンチのデリなど、ふらっと立ち寄りたくなるエッジの効いたお店が点在。大人の暮らしに彩りを加えてくれる要素がギュッと詰まっているように感じられました。

最後に、不動前の魅力について金川さんはこのように語ってくれました。

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「こじんまりしていて、ローカルなゆとりを感じる街だと思います。マニュアル化した生活にはない、人情味を肌で感じられるんです。かわいいおじいちゃんやおばあちゃんが営んでいる個店も多くて、飲食店では『これ食べてみて』なんておかずをおまけしてくれることもしばしば。チェーン店しかない街やおしゃれ満載の街では、あまりないことですよね。街角で人の優しさに触れることができる、それが不動前の良さではないでしょうか」

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取材・執筆:末吉陽子
編集者・ライター。1985年、千葉県生まれ。日本大学芸術学部卒。コラムやインタビュー記事の執筆を中心に活動。ジャンルは、社会問題から恋愛、住宅からガイドブックまで多岐にわたる。
http://yokosueyoshi.jimdo.com/

記事編集:有限会社ノオト

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取材協力

写真:金川勝己さん
金川勝己さん

武蔵小山新聞編集長。35歳で日本大学法学部法律学科に入学し、4年通い同校を卒業。IT系業務に20年就く文理融合思考。桃とひらがなの曲線が大好き。