江戸時代から現代まで、時代ごとに変化する間取りのトレンド。そしてこれから主流になる間取りとは?

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住宅の間取りは時代ごとのライフスタイルにより変化する。近年では、部屋数を絞ってリビングを広くとったり、仕切りをなくして回遊性を高める間取りなどが人気だ。こうした間取りのトレンドは、どのように変化してきたのだろうか? 江戸時代から明治、昭和、そして現代までの間取りの変遷をたどっていくと、日本人の暮らしがどのように変化してきたかがよく分かるはずだ。そこで、建築家であり、「一般社団法人 日本間取り協会」 の代表でもある上田康允さん(以下、上田さん)にお話をうかがってみた。

●江戸時代から遡る、一軒家の変遷

まずは、江戸時代にまで遡り、時代ごとに日本の住まいの一般的な間取りについて聞いてみた。

上田さん「江戸時代、日本人の80%は農民で地主、小作農、自作農に分かれていました。なかでも農民の60%〜70%を占める小作農は、地主や自作農が所有する小屋や納屋に借り住まいしていました。広さはだいたい1間しかないような小さなものですね。しかし、当時は庶民が家を持てる時代ではなかったので、それが一般的だったんです。一方、地主は大きな家に住み、自作農は中規模な家に住んでいました。玄関から広がる土間では、料理を作ったり、農作業を行いました。また、いろりのある茶の間でご飯を食べ、中の間・下の間が父母や子ども達の寝床になります。そして、祖父母は仏間で寝起きし、座敷は客間として使用していました。やはり、江戸時代は今と違い、近隣とのつながりが非常に大切だったので、一番良い場所に座敷をつくり、お客さんをもてなしていたんです。なお、外には井戸や便所、農耕用の牛と馬が住む納屋があり、これが江戸時代の類型化された1つのモデルになります」

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▲地主や自作農の家の一般的な間取り

続いては、西洋の文化を取り入れ始めた明治・大正時代。この時期、国民の仕事は農業から商業へ大きく変革。都市部の人々の暮らしは大きく変化しましたが、地方では大きく変化せず、ゆるやかに新しいものを取り入れていったそう。

上田さん「当時の地方は、まだまだ貧しかったため、古い家を修繕・増改築をしながら住んでいました。例えば、土間には床が敷かれ、台所へ変わりました。また、都市部では新築も多く、男性の権威あるいは知識人の象徴として、応接客間兼書斎が作られたりもしましたね。さらに、都市部の中心には上水道も通ったため、井戸や水瓶は使われなくなり、トイレは家の中に作られるようになっていきます」

そして、昭和へ。戦前は明治・大正時代の間取りと大きな変化はなく、戦後間もなくの都市部は多くの家屋が焼失してしまったため、掘っ建て小屋を建てて住む人、地方の実家へ疎開する人が多かったそうだ。

上田さん「昭和30年代から日本は高度経済成長を迎えます。そのため、昭和40年代からマイホームを建てる人が急増しました。ただ、この時代でもまだ、間取りには共同体意識・男性家長優先の名残が見られます。たとえば、座敷や主人の寝室は条件の良い場所に。片や、女性が立つ台所は条件の悪い場所に作られていました。また、特徴としてリビングとダイニングが作られるようになったのも昭和中期〜後期からです」

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▲家だけでなく、庭や車も個人が保有する時代へ

そして、今の平成に入ると家長制度はなくなり、間取りにも変化が表れる。

上田さん「平成になると、主人だろうと部屋は2階に移るようになりました。むしろ、家族・女性中心の間取りが主流となっていきます。南側にキッチンが作られるようになったり、LDKを仕切ることなく、家族一体という間取りが増えていったんです。さらに、座敷や仏間の存在は重要ではなくなり、和室は客間としてだけでなく、家族の休憩スペース、子供たちの遊びスペース、とリビングの延長として利用する家庭が多くなったと言えます」

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▲良い場所にLDKが作られ、家族団らんのスペースが充実

●昭和から登場した集合住宅も、時代とともに間取りが変化

このように、一軒家の間取りは時代背景とともに大きく変化してきたようだ。では、マンションなどの集合住宅の場合はどうだろうか?

上田さん「明治・大正時代に西洋建築が入ってきたことで、高層集合住宅は確立していきました。そのため、家長制度や大家族制といった風習や文化の影響を受けず、間取りも当初から西洋的、核家族的なものでした。ですから、間取り自体は現代の間取りとさほど変わりはないんです。強いていうならば、家族・女性中心の間取り(LDK重視の間取り)が主流になってきたことでしょう」

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▲昭和中期に作られた集合住宅の間取り

●これからの間取りはどうなっていくのか?

最後に、現代の間取りの特徴とこれからの変化について聞いてみた。

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上田さん「最近の都内の間取りは、土地が狭いため家が小さくなる傾向があります。そのため、3階建てが多いですね。1階に車1台を停めるスペースを設け、それ以外の場所に洗面台、お風呂、トイレ、それと洋間を配置するのが一般的です。2階はLDKになることが多いですね。やはり土地が狭いため、仕切りをなるべくなくしたオープンな間取りが主流となっています。3階は、寝室と子ども部屋といったところでしょうか」

そして、次の時代はどのような間取りが主流になるのか?

上田さん「これまでは、男性の家から女性の家に変化してきました。しかし、それを作ってきた大工、建築士は男性がまだまだ多い。つまり、『男の考え』で家を作ってきたということです。もちろん、それでも昔に比べれば女性も住みやすくなってきましたが、今後は男性女性という観点ではなく、今まで放置されてきた"使いやすさ"にフォーカスされた間取りが当たり前の時代になると思います。家事動線や生活導線に優れた間取りは、専業主婦だけでなく、共働きの夫婦や一人暮らしの人にとっても重要なポイントになるでしょう」

時代や社会の変化によって、間取りの最適解も変化する。今はライフスタイルが多様化しているだけに、間取りにもフレキシブルな考え方が必要になるだろう。そういう意味では、今後はもっと自由で大胆な間取りも生まれくるかもしれない。

取材・文:小野洋平(やじろべえ)

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取材協力

上田康允

1965年生まれ。兵庫県神戸市出身。ハウスメーカー・工務店で勤めた後、建築家として独立。現在、「上田康允デザインコラボ」代表として、全国各地で、住宅・店舗を手がけている。
「一般社団法人 日本間取り協会」代表理事。間取りの専門家で、「間取り先生」の愛称で、テレビ出演や、全国での講演活動など、多方面で活躍中。

趣味は合気道で、「和合の道を探る」というのがモットー。海外旅行が趣味で特にハワイが大好き。著書に、「安らぐ家は間取りで決まる」、「間取りにこだわればいい家になる」、「間取りプランナー1級・2級・初級教本」(日本間取り協会講座用)、共著に「絶対失敗しない土地と一戸建ての買い方」がある。