不動産売却時に押さえたい「耐用年数」を詳しく解説!

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住宅の「寿命」がどのくらいかをご存じでしょうか。住む上でも、そして売却や購入、投資をする上でも住宅の「耐用年数」は見逃せないポイントになります。

しかし、「日本の住宅は寿命が短く、あっという間に価値が下がってしまう」ともいわれています。大事な資産である不動産はどれぐらいの寿命があり、年数によってどのように価値を変えていくのでしょうか。住まいの性能・安全について情報を発信している一級建築士の井上恵子さんに解説していただきました。

※マンションAIレポート内では取材当時の情報で掲載しております。

●「耐用年数」には、実は種類がある!?

「まず、住宅の耐用年数には『法定耐用年数』『経済的残存耐用年数』『物理的耐用年数』といった考え方があります。それぞれ、次の内容です」(井上さん 以下同)

  • 法定耐用年数......税法上その建物に価値があるとされる期間で、資産の種類や構造、用途によって一律に決められているもの
  • 経済的残存耐用年数......その建物が実際にあとどの程度使えるかを示すもの。劣化の程度や建物の機能、今後必要となる補修やメンテナンス費用などによって算定される。構造が同じであっても、建物ごとに数値は異なる
  • 物理的耐用年数......建物そのものが劣化して使用できなくなるまでの年数を示すもの

「このなかで私たちが最もよく目にするのが『法定耐用年数』です。機械や車など、モノにはそれぞれ個別の耐用年数があり、住宅では鉄筋や木造などの構造によって大きく異なります。現状ではこの法定耐用年数によって建物の価値を判定することが多くなっています」

住宅の法定耐用年数(新築の場合)

  • 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造......47年
  • れんが造、石造、ブロック造......38年
  • 金属造......骨格材の肉厚4mm超:34年、骨格材の肉厚3mm超4mm以下:27年、骨格材の肉厚3mm以下:19年
  • 木造、合成樹脂造......22年
  • 木造モルタル造......20年

出典:主な減価償却資産の耐用年数(建物・建物附属設備) (国税庁)
https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34354.php

法定耐用年数は「法定」とある通り、もともと減価償却費を計算するための指標であって、現実的な寿命に紐づいているわけではありません。実際の建物はどれぐらいもつものなのでしょうか?

「国土交通省のデータで『滅失住宅の平均築後年数の比較 』を見てみましょう。減失住宅とは、解体や取り壊しなどでなくなった住宅のこと。つまり、取り壊された住宅の平均寿命ですね。日本とアメリカ、イギリスの数値が比較されていますが、アメリカ 66.6 年、イギリス 80.6 年に対し、日本は32.1年とやはり短寿命ですね」

30年ちょっとという短さに驚きますが、こちらはあくまで取り壊された住宅の平均寿命。取り壊されず、さらに長く住み続けられる長寿命物件もあります。

「建物が実際にどれだけの期間住めるかは、どのような住まわれ方をしたのか、メンテナンスの頻度などによってまちまちです。きちんとお手入れされてきた建物は法定耐用年数より長く持ちますし、メンテナンスをあまりしてこなかった建物はもっと早く住めなくなるケースもあります」

中古住宅の資産価値は法定耐用年数によって一律に判定されることがほとんどですが、新たな法律の施行により、徐々に状況も変わりつつあるとか。法定耐用年数の一択から、より多角的な判断、精査がされていくようです。

「2000年に『住宅の品質確保の促進等に関する法律』、2009年に『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』が施行され、高品質で長持ちする仕様の住宅が供給されるようになりました。近い将来、これらの優良な住宅が中古住宅として市場に出回るようになると、法定耐用年数だけでなく、経済的残存耐用年数や物理的耐用年数など、その他の条件も加味して判断されるようになるでしょう」

修繕中のマンション

●子や孫、次世代に引き継げる物件を示す指標も

建物の経年劣化の度合いは、構造や用途、住まい方によってケースバイケースです。このとき、劣化しにくさを見極めるポイントはあるのでしょうか?

「建物本体が劣化するスピードを遅くするための対策がどの程度とられているかを調べることができます。それが『住宅性能表示制度』です。首都圏の分譲マンションの多くでこの制度を利用しており、『劣化対策等級』という項目で物理的な耐用年数がわかります。たとえば、最高等級『3』 の家は、3 世代、おおむね75~90 年に渡って長持ちするように造られていることを示します。子や孫に引き継げる、資産性のある家といえるでしょう」

劣化対策等級

  • 等級3......通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で3世代(おおむね75~90年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている
  • 等級2......通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で2世代(おおむね50~60年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている
  • 等級1......建築基準法に定める対策が講じられている

「どのような品質で建てられたのか。建った後には適切な時期に適切なメンテナンスを施されてきたか。メンテナンスの履歴をきちんと残してあるか。今後は、これらのポイントが住宅の具体的な判定材料になっていくでしょう。不動産の売却を考えている方は、それらについてしっかりと対策をしておいてください」

建築技術が進歩し、建物の耐用年数は増しています。建物を長寿命化し、価値を減衰させないためには、物件のポテンシャルを見極めつつ、メンテナンスまで長期的に見据えていく必要がありそうです。

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取材・文:佐々木正孝
ライター/編集者。有限会社キッズファクトリー代表。情報誌、ムック、Webを中心として、フード、トレンド、IT、ガジェットに関する記事を執筆している。

編集協力:有限会社ノオト

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取材協力

井上恵子さん

住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 主宰。一級建築士/インテリアプランナー/住宅性能評価員講習修了。日本女子大学通信教育課程「住宅リフォーム計画」講座担当。非常勤講師。保育園の設計・工事監理、All Aboutなど生活・住宅情報サイトでの記事執筆、新聞へのコラム掲載、マンション購入セミナー講師などを務める。
▼住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所
http://atelier-sumai.jp/

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