新駅・新線・新乗り入れなど、鉄道の開発が不動産に与える影響とは?

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約40年ぶりという山手線新駅の開設や、東京を南北に貫くJR上野東京ラインの開業など、新駅、新線のニュースが相次いでいます。また、相鉄がJR、東急との直通プロジェクトを進めるなど、各線の相互乗り入れも活発に行われています。

これらの新線、整備による地価の変動は、不動産の売却や購入を考える上では無視できない要素になります。新駅・新線と地価変動の関係を不動産コンサルタントの牧野知弘さんに解説してもらいました。

●新駅、新線が不動産価値にもたらすメリットとは

「日本、特に首都圏などの大都市圏は電車社会。多くの人が電車によって通勤、通学しています。電車の線路がどう変わるか、都心などにスムーズにアクセスできるかという要素は、不動産価格の変動に大きな関わりを持ってきました。資産価値の観点からしても、新規の乗り入れ、新しい駅は不動産の購買欲をそそるポイントになるのは確かでしょう。山手線の新駅はJRの車両基地だった広大な土地の再開発を伴います。土地の価値、不動産価値に及ぼす影響は極めて大きいはずです」(牧野さん 以下同)

ただ、職住近接などをねらって都心の居住を選択する層もいますが、都内に新たな不動産を購入するのはハードルが高めです。そのため、多くの人が都心から放射状に伸びる鉄道沿線に住宅用の不動産を買い求めてきました。住宅を購入したビジネスパーソンらが通勤しやすいよう、各私鉄は都心へのアクセス性を高めてきました。

<現在進行中の計画>
・相鉄の都心直通プロジェクト「相鉄・JR直通線」「相鉄・東急直通線」
・つくばエクスプレス(TX)の東京駅延伸

昨今の新線(計画含む)は、その流れに連なるものですが、高齢化が進み人口が減少に転じた日本では、やや過去のモデルになりつつあるようです。牧野さんは、鉄道会社のビジネスモデルの変換から、新線・郊外拡散スタイルの限界を指摘します。

「今後、さらなる延伸計画を私鉄が用意しているかというと、そういうことはないんです。郊外に新しいニュータウンができ、通勤者のベッドタウンとして栄えるというのは考えづらい。東京都ですら、2020年を過ぎると人口が減少に転じるという予測があります。そうなると、量的な拡大を目指してきた不動産は明らかに変換点を迎えます」

では、今後はどういった戦略が考えられるのでしょうか。

「郊外の住民がどんどん高齢化する中、鉄道収入の根幹を占めてきた定期券収入が頭打ちになることは自明です。そこで、各私鉄は上り電車ではなく、下り電車に伸びしろを模索しています。小田急線の箱根や京王線の高尾、東武の日光、西武の川越、京成の成田山などなど。国内外の観光客が都心から目指すような魅力的な街、観光地を作っていこうという取り組みが活発です。都心への乗り入れ、アクセスを目指す戦略は、今となってはやや時代遅れに映ってしまいますね」

国内外の観光客が来る魅力的な街

●立地や利便性だけではなく、自分のライフスタイルも考慮に入れて

牧野さんの言葉を裏づけるように、郊外に拡散していた戸建住宅購入者が高齢化し、利便性の高い中核タウンの駅近マンションを購入する動きが活発です。

「JR中央線の立川駅が代表例ですが、駅前高層マンションの購入層は相続対策の富裕層や、外国人投資家に加えて、定年退職したシニア層が目立っているんです。

その多くが、立川駅からバスでアクセスするような郊外の戸建住宅街の住民たち。年をとるにつれて郊外の生活は不便を感じ、買い物などに便利な駅近に集まり始めています。これは、地方の自治体などが進めるコンパクトシティ計画が、住民によって自発的に行われているということ。

私はこれを『勝手コンパクト』と呼んでいます。高齢化や人口の減少が、不動産の価値に大きく影響をし始めている、ということですね。現在、そして近未来の新線、新駅も確かに影響を与えますが、時代の変化による価値観、社会の変化も無視できません」

牧野さんは「この建物を買ったら5年後、10年後、20年後の自分、家族はどうなるんだろう、と思い描いて取得していただきたい」と強調しました。

アベノミクスや五輪特需は「交通の利便性」をアップさせるかもしれません。ただ、不動産の購入・売却は年齢や家族の形態など、ライフスタイルも大きく影響します。経年の変化をしっかりと見据え、不動産を吟味していきましょう。

取材・文:佐々木正孝
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ライター/編集者。有限会社キッズファクトリー代表。情報誌、ムック、Webを中心として、フード、トレンド、IT、ガジェットに関する記事を執筆している。

編集協力:有限会社ノオト

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取材協力

牧野知弘さん

オラガ総研代表取締役 不動産事業プロデューサー
ホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や講演活動で活躍している。近著に『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)
▼オラガ総研株式会社
http://www.oraga-hsc.com/