不動産業界のキーワード!? 「不動産テック」をひもとく(後編)

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ここ最近、雑誌や書籍、インターネットメディアなどで目にする機会が増えてきた「不動産テック(Real Estate Tech)」という言葉。不動産に携わる全ての人々、または不動産と関わるあらゆる接点で大きな変革をもたらす可能性を秘めたこのキーワードをひもとくため、ソニー不動産の情報技術を統括している角田智弘と、サービス企画・マーケティングを統括している青木和大に話を聞きました。

【担当者プロフィール】

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ソニー不動産 情報技術担当 人事担当
執行役員 角田智弘(つのだともひろ)

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ソニー不動産 企画・マーケティング室
室長 青木和大(あおきかずひろ)

不動産テックのブレイクスルーはデータ整備が鍵

――不動産テックが日本で発展していくために必要なものは?

青木: そうですね。例えばアメリカでは、Real Estate Tech(リアルエステートテック)の先進的な事例の1つとして、「近々売りに出されるであろう物件を予測する」というものがあります。具体的には、誰がどこに不動産を保有していて、ビッグデータの解析によって、「このマンションはもうすぐ売りに出されるだろう」という予測値をヒートマップで表示するという実に面白いサービスです。このようなサービスを実現するためには、充実したデータの蓄積とデータをどう利用するかというアイデアやそれを具体化するための技術があってこそと言えますが、蓄積されたデータとそれを格納するデータベースの整備という点で日本はアメリカに遅れをとっていると思います。ただし、データを解析する技術に関しては、日本がどこかの国と比較して劣っているとは決して思いません。

角田: 前回の話でも出た「情報の非対称性」と重なる部分でもあるのですが、あるデータを1つの会社だけが持っていたり、さらにはその中の特定個人だけが抱えているケースがあるなど、依然として日本では等しく誰もがアクセスできる状態にデータが整備されていないのが実情です。

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――ソニー不動産がこういったデータ整備もやっていくのでしょうか?

青木: 先ほど例に出したヒートマップのようなものを作る際には、長い時間をさかのぼって、全国の不動産のひとつひとつの取引履歴を収集する必要がありますが、そのような膨大なデータを個社である我々が集めるのは、現実的には難しいと思っています。

角田: 日本でも国主導のもと、データを充実させ積極的にITを活用していこうという流れが出てきているので、我々のようなテクノロジーを持つ会社が顧客価値の高いものを提案していくことで、次世代につながるデータベースをつくるお手伝いをしていけたら素晴らしいなと考えています。

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ソニーに源流をもち、また不動産会社発だからこそできる「不動産×テクノロジー」の提供にむけて

――では不動産テックの分野でソニー不動産だからできることはありますか?

青木: 昨年、我々がヤフー株式会社と協同でスタートさせた「おうちダイレクト」というサービスには、「不動産価格推定エンジン」という機能が備わっています。これは、様々な不動産関連の膨大な量のデータを解析し、不動産売買におけるシステム推定価格を算出するものです。おうちダイレクトにおいては、売主さまが値付けの参考にする重要な役割を担っているので、大きな責任を感じていると同時に、ソニーが培ってきた技術に不動産のデータやノウハウが変数としてしっかり反映され初めて実現できたと自負しています。

角田: ソニーは、人工知能、いわゆるAIの領域での技術開発を脈々とやり続けてきた会社です。その延長線上で、AIにより不動産の成約価格を推定する「不動産価格推定エンジン」を開発しました。不動産価格推定の技術を開発する上では直接関係なさそうですが、例えば、ソニーでは、写真に写っているのが花なのか、食べ物なのかを機械が自分で考えて認識できるような画像認識技術に強みを持っております。この画像認識で活用される技術は不動産テックの分野で稼働する技術と全く異なるように見えて、実は、「不動産価格推定エンジン」などとテクノロジーのコアは非常によく似通っているので、いち早く精度の高い推定エンジンのリリースが実現したわけです。

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――なるほど。これまでお話をきいていると、不動産テックを実現するうえでデータ化は不可欠な要素だと思いますがいかがでしょうか?

角田: そうなんです。実際に、不動産の査定価格に影響する要素でデータ化されていないものもまだまだ少なくはありません。例えば、陽当りや内装の汚れなどがそれにあたります。データがなければ、当然ディープラーニングも機能しないので、不動産会社の人間が実際に現地に出向いて算出する査定額とのズレが生じる一因はここにあります。

青木: 今後、物件に関するデータベース化がオープンに進み、こういったデータにアクセスできるようになれば査定額のズレも小さくなり、不動産のバリューアップはどの程度かということが精度高く計算できるようになる可能性が多いにあります。

――その他に、不動産テックに向き合う上で意識されていること、感じていることなどはありますか?

青木: 不動産に関連したデータの使い方や精度のブラッシュアップという領域は、角田さんを始めとした技術部門が担っていますが、わたしが所属する企画・マーケティング部門では、我々が強く信じている世の中の役に立つ不動産テックをどのように世界に紹介していくか、あるいは接点をつくっていくかを考えています。技術とマーケティングがうまく噛み合っていかないと、本当に世の中を変える存在にはなっていかないと感じているので。

角田: ソニー不動産という同じ目的を持つチームのなかで、物件を実際に扱っている不動産エージェントのフィードバックを得やすい現在の環境は、技術者として非常にありがたく感じています。テクノロジーそのものは、膨大な量のデータを迅速に処理するための進化を日々続けていますが、「不動産業をよくする」というテーマで考えた際には、テクノロジーに掛け合わせるデータはどういったものが有用であるとか、効率的であるとかの意見や指標を、実業をやっている現場の声にいつもヒントをもらっています。これはインターネットオリエンテッドの会社ではできないことではないかなと思います。

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不動産売買に役立つサービスから、ライフスペースUXという大きなコンセプトへ。

――最後に、今後の「不動産テック」、のに対するお二人の考えについて教えてください。

青木: 先ほど画像認識の話が出ましたが、たとえば、部屋に設置したセンサーが居住者の行動様式のデータを蓄積すれば、より快適な住まいにするために部屋はどうあるべきか、家はどうあればよいかといった話に発展していきます。その発展は、やがて町づくりやコミュニティづくりといったところまで拡大し、ソニーが提唱しているライフスペースUXという考え方にも行き着くのではないかと思っています。我々がこれまでお話した不動産仲介に関わるテクノロジーだけではなく、家を手に入れた後の生活を支えるテクノロジーへと進化していくのかなと。

角田: これはあくまでプライバシーを守りながら、という前提があっての話ですが、異常な動きを感知する監視カメラの技術を応用すれば、車や人が飛び出してくるリスクや情報を歩行者やドライバー、車そのものに伝えることで、死亡事故0の街づくりにつながるかもしれません。それから、社会問題として昨今話題にあがる「空き家問題」を解決する糸口も不動産テックにあると思っています。不動産テックによる業務効率化は、低価格帯での不動産流通の活性化を促進すると信じているからです。

不動産は、同じ条件の物件は決して存在しない唯一無二の商品を扱う業種です。そのため、例えばVRを活用したバーチャル体験などの物件固有の特性や魅力を伝えるためのテクノロジーの進化には非常に意味があると同時に、市場のトレンドや外的環境などの様々な要因でその価値を常に上下させる難しさもあるので、テクノロジーの分野に身を置く技術者としてはとてもエキサイティングな現場です。

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青木: ソニー不動産はソニーならではの技術を生かし、IoT的な要素を取り入れながら、よりよい社会の実現を目指しています。わたし自身は、不動産業にITを掛け合わせることで、家を最小単位にした豊かな住環境を獲得するための意思決定を支援する確固たるサービスとして不動産テックを今後発展させていきたいと考えています。

角田: 不動産テックがもたらす利便性もさることながら、不動産は高額な取引で、なおかつお客さまの生活や人生と密接に関わる分野であるからこそ、ポジティブな情報とネガティブな情報もあわせ、物件の供給者と需要者、仲介者それぞれに偏りなく透明性の高い情報をお届できるよう、不動産取引における情報のさらなる見える化を推し進めていくつもりです。

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取材・文

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岩本俊介(いわもと しゅんすけ)
文案家。八割計画所属。

編集

株式会社カラーコーディネーション

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