「おうちダイレクト」を根幹で支える「おうちデータベース」。「不動産テック」の兆しとこれから。

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最近にわかに耳にする機会が増えてきた不動産業界の新しい潮流「不動産テック」。不動産とテクノロジーを掛け合わせ実現する数々の新サービスや新しい取り組みはどのような未来を我々にもたらしてくれるのか。
「不動産テック」の現在進行系とも言える「おうちダイレクト」のサービスを根幹から支える「おうちデータベース」について、「おうちダイレクト」でサービス設計や企画を担当されるヤフー株式会社の山崎さんにお話を伺いました。

「不動産テック」あるいは「おうちダイレクト」の「今」と「これから」。山崎さんから語られるビジョンを通して、不動産売買の在り方が今後消費者にとってどのように変化していくのかを探ります。

※おうちダイレクトとは、ソニー不動産株式会社とヤフー株式会社が共同で運営する不動産売買プラットフォームです。売主の状況に応じて選択が可能な3つの売却プランを提供しており、そのうちの1つ「セルフ売却プラン」は、マンションの所有者(売主)自身が価格を自由に設定し、不動産仲介会社を介することなくWEBサイト上で自由にマンションを売り出すことができます(売却仲介手数料0円)。このほかにも、ソニー不動産のエージェントが売主の立場に立って高値売却を追求する「おまかせ売却プラン」(売却仲介手数料あり)、査定から最短10営業日でソニー不動産が物件を買い取る「買取プラン」(手数料0円)があります。

【担当者プロフィール】

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ヤフー株式会社 おうちダイレクト企画
山崎 英海(やまざき ひでみ)

「おうちダイレクト」で提供する「おうちデータベース」とはどんなもの?

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――まずは「おうちデータベース」なるものの概要を聞かせてもらえますか?

【山崎】はい。「おうちデータベース」とは端的に申し上げると、不動産会社を介さない中古マンションの売買を可能にした「おうちダイレクト」の「セルフ売却プラン」の根幹を担う情報群です。現在リリースしているこの「おうちダイレクト」の「セルフ売却プラン」は、個人のお客さまが、不動産仲介会社を介することなくご自身のマンションの売り出しを可能にした新しい不動産売買プラットフォームです。個人の売主さまがご自身の物件を「おうちダイレクト」に売り出し登録するにあたり、当該物件の過去の推定成約価格の変化、類似物件の情報や同じエリアの物件価格など売主さまでは揃えづらい情報をおうちダイレクトデータベースが保有する膨大な情報より抽出し、これらの情報を売主さまに提供するのが「おうちデータベース」の大きな役割のひとつと言えます。

――不動産のデータベースと聞くと「レインズ」が思い浮かびますが、「おうちデータベース」の独自性や「レインズ」との大きな違いはどこにあるのでしょうか?

【山崎】まずは、不動産情報がクローズドかオープンかというのは大きな違いです。「レインズ(不動産流通標準情報システム)」は、会員となった不動産会社が不動産情報を提供したり提供を受けたりするシステムで、一般消費者はレインズの物件情報を取得したり、閲覧することはできません。一方、「おうちデータベース」の物件情報やデータは「おうちデータベース」のフロントページとも言える「おうちダイレクト」で閲覧者を制限することなく一般公開しています。
次に「おうちデータベース」はストック型のデータベースという点にも大きな独自性があると考えています。「レインズ」では、原則として現在売りに出されている物件だけが扱われますが、「おうちデータベース」では、マーケットに流通している物件だけでなく、「おうちダイレクト」がサービスの対象とするエリアにある全ての物件情報を扱うことを目指しています。
これまでは「このマンションに住みたい!」と思っても、当然ながらそのタイミングで売りに出されている物件にしか買主さまはアプローチできませんでしたが、「おうちダイレクト」では買主さまが「買いたいリクエスト」機能を使い、まだ売りに出されていない物件の売り出しを促すこともできます。

――なるほど。マンション売買の流れが大きく変わりそうな雰囲気を感じますね。

【山崎】もう一つ加えさせていただくと、これは「おうちデータベース」の独自性というよりも「おうちデータベース」と連動した「おうちダイレクト」の新しさと言うべき内容ですが、「おうちダイレクト」では「おうちデータベース」に充分な物件情報が蓄積されると、「不動産価格推定エンジン」と我々が呼んでいる精度の高い人工知能による自動学習がはじまり、お客さまが保有する売却希望物件の推定成約価格を算出するサービスを提供しています。これは、個人のお客さまの不動産の売り出しを支援する有効なツールとして是非とも多くの方々にご活用いただきたいです。

「おうちデータベース」の課題とこれから

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――では、「おうちデータベース」が抱える現状の課題と、不動産データベースとして見据える将来像を聞かせてください。

【山崎】現状の課題と今後の構想は重なる部分が多いので、まとめてお答えさせていただきますが、「おうちデータベース」における現状の課題は、残念ながらサービスが限定的な提供に留まっていることにあります。まだまだ若いサービスという理由もあり色々と難しさはありますが、今後の構想としてチーム内でよく話題にのぼるのは、扱う物件種別を「分譲マンション」だけでなく、「戸建て」や「賃貸マンション」まで増やしたり、「おうちダイレクト」が対象とするエリアの拡張といった「横方向への広がり」。それからひとつひとつの物件に付随する情報やデータをさらに拡充させる「縦方向への深さ」です。

――「情報やデータの深さ」について、もう少し聞かせてもらえますか?

【山崎】はい。地域の治安や教育施設など物件の住環境の情報提供であったり、過去にその部屋はどのようなリフォームを重ねてきたのかという履歴などがこれにあたります。単純な「建物」や「部屋」の設備的な価値だけでなく、周辺の住環境や避難経路や避難場所などを示すハザードマップ、今後住み続けるにあたって、どれくらいコストが必要かは、実際に不動産の購入を検討されている方であれば当然皆さん気にされる内容だと思うので、これまで相対的な評価に留まり目に見えにくかったもの、または絶対的な数値化をしづらかったものも含めて「おうちデータベース」になんらかの方法で、これらの情報を蓄積していけたら素晴らしいと考えています。

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――確かに、周辺の治安や教育施設などの住環境の情報が、高い客観性や精度で指標化されたら不動産を購入する際には多くの人が利用することになりそうですが、現実的にそんなことはできるのでしょうか?

【山崎】個人的には出来ると思っています。例えば、自治体や他分野でご活躍されている企業さまから情報などをご提供いただき、我々が保有する情報と組み合わせていくというやり方は一つの方法だと思っています。
あるいは「おうちダイレクト」に携わるYahoo! JAPANでは、様々な業種や業態に向けたサービスを提供していますが、今後Yahoo! JAPANが保有しているコンテンツとの横断的な連携を図ってみるのも面白い試みです。現在でも不動産と親和性の高い「Yahoo!地図」や「Yahoo!路線情報」などは「おうちダイレクト」のサービスに組み込まれていますし、個人的な意見として、「Yahoo!ファイナンス」に蓄積されているデータやノウハウも「おうちダイレクト」に掛け合わせるとすごい化学反応が生まれるかもしれません。

――ここまでのお話をお聞きして、「おうちダイレクト」で例えば住宅ローンのシミュレーションや、〇〇年で比較した際に購入or賃貸のどちらが経済的かなどのアドバイスを、サービスとして提供することに難しさはないように思えるのですが、今後そういったサービスのリリース予定はないのでしょうか?

【山崎】おっしゃる通り今挙げていただいたサービスを「おうちダイレクト」に組み込むことは、現在「おうちダイレクト」が保有する情報で、実現可能かもしれません。が、果たしてそれらを「おうちダイレクト」のサービスとして提供することがベストか、または「おうちダイレクト」としてふさわしいサービスかの議論は時間をかけて重ねる必要があると今は思っています。

「おうちデータベース」や「おうちダイレクト」をはじめとした「不動産テック」がもたらす未来は

――不動産とテクノロジーの掛け合わせで実現するサービスや、テクノロジー化の進む不動産業界という文脈で「不動産テック」という言葉を耳にする機会が増えましたが、まだまだ一般の消費者には耳馴染みのない言葉だと思います。具体的に「不動産テック」の兆しを今、我々消費者が実感できる場所、またはタイミングってありますか?

【山崎】少し難しい質問ですが、これは現在我々が取り組んでいる「おうちダイレクト」がまさに「不動産テック」の現在進行系だと思っています。まずは、インターネット上で不動産の売り手と買い手のマッチングさせること。膨大な情報量を格納したデータベースとの連携。人工知能による巨大で複雑なデータ集合の集積物であるビックデータの処理と自動学習によるシステム推定価格の算出。「おうちダイレクト」が提供しているサービスそれぞれに「不動産テック」は息づいているし、脈打っています。

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卑近な例を一つ挙げると、「買いたいリクエスト」という仕組み。これは、おうちダイレクトにオーナー登録している方に購入検討者から買いたいという「リクエスト」が届くものですが、これをテクノロジー抜きで行った場合を想像するといかに「不動産テック」がスマートな不動産売買の在り方を提案し、テクノロジーがそれを支えているかをイメージいただけると思います。購入検討者が目星を付けたマンションの全住戸を周り「この部屋を買う意思がわたしにはあります」というチラシをポスティングしていく代わりにパソコン上でいくつかの手順を経るだけで、瞬間的にしかも同時並行的に行えるのは、時間や距離の概念を取り払えるインターネットというテクノロジーの恩恵に他なりません。

――確かにそうですね。では、これまで常識とされていた「不動産仲介のやり方」はテクノロジーの介在で前時代的な「やり方」になってしまうのでしょうか? あわせて、「おうちダイレクト」をはじめとする「不動産テック」の成熟が我々にもたらすものは何でしょう?

【山崎】まだまだ日本の中古不動産市場の規模は、欧米諸国と比較して小規模であることは動かしがたい事実ですが、「おうちデータベース」のような新しい情報インフラを整備しながら、少しでも不動産取引をしやすい環境の創出をしていくことで、日本の中古不動産マーケットの活性化に貢献するというのが「おうちダイレクト」の大きなビジョンです。

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また、ここからはあくまでも私見ですが「不動産テック」の成熟とともに情報のオープン化が進むと、売り手、買い手、あるいは仲介者それぞれが持つ情報のボリュームやクオリティの非対称性の解消が期待でき、大きな流れでは市場から淘汰されていく住宅も出て来るような感覚を持っています。偏りのない情報を売り手、買い手、仲介者が等しく持つようになれば、必然的に売買で扱われる「住宅そのもの」が潜在的に持つ「価値」の存在感が一層増してくるというのが理由です。同時に「住宅」の仲介者に求められる役割にも変化が起こると考えています。具体的には「住宅そのもの」が潜在的に持つ価値をしっかりと評価できる知見が求められるようになり、今で言うと来年2018年4月の宅地建物取引業法の改正により義務づけられる建物状況調査(住宅インスペクター)やファイナンシャルプランナーといった方々の専門性へのニーズが高まりそうです。
いずれにせよ、情報のオープン化を推進することに賛否はまだまだあると思います。しかしながら、消費者目線で個人的に、かつ楽観的に考えると、不動産市場に流通する住宅が一定の品質を持ち、住宅を求める全ての方々に「価値」の高い住宅がこれまで以上に行き渡る世の中をイメージする時間はとても楽しいですし、大きなやりがいを感じています。


取材・文

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杉村 敏之(すぎむら としゆき)
ライター・Webディレクター

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